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[コメント] ブラック・スワン(2010/米)

非常に面白いし、ナタリー・ポートマンの演技はオスカーにふさわしい高度なレベルに達していると思うが、過剰なCGと「びっくり演出」が全てを台無しにしている。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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他人の悪意に怯えながら、実はその「他人の悪意」は自らの心に内在する他人への悪意が単に自分自身に向けられたものであったり、という状況がそのまま映画になっているような映画。

明らかに人格障害者もしくは人格に偏りのある人物である母親によって箱入り娘として育てられて、人生のほとんどすべてをバレエに捧げているような主人公を演じるのがナタリー・ポートマンである。

彼女の演技力は「レオン」の頃から十分明らかだが、そもそも演技力を要求されない「スター・ウォーズ新三部作」で飾り物的立場に徹していた彼女は実に気の毒であった。しかし、この映画で、彼女の持っている演技力のほとんど全てが発揮されていると感じる。

しかし、非常に残念な事に、この映画は彼女の演技による表現を上塗りしてしまうかのようなCGがこれでもかと多用されているため、せっかくの表情、せっかくの体の動きがことごとく殺されてしまっているのだ。

彼女が身をもって表現している「内気で臆病な乙女」から「黒鳥」への変身は、圧巻の迫力であるが、これらは全編ドキュメンタリー風のカメラワークだけでもって表現してよかったのではないかと思う。

終盤、身も心も黒鳥になりきったポートマンのキメポーズは、観客からは普通のバレリーナのポーズに見えているが、背景にできた影には鳥の翼が投影されているという描写になっている。この映画のクライマックスである。しかし、これはまさに説明過剰の作りであり、このシーンのせいでエンディングを誤解させかねない効果があって、全く余計だと思う。

随所に出てくる、でっかい音や、突然現れる奇怪な人物による「びっくり演出」も、ものすごく映画の格を下げてしまうので残念だ。次から次に発生する「痛そうなできごと」も、本当に必要なのかと思ってしまう。

こうなってくると、別人みたいになったウィノナ・ライダー(エンドロールを見るまで彼女が出ている事に気づかなかった)やら、「キャリー」のおっかさんみたいなバーバラ・ハーシーを使って構築した演出まで無駄になっているような気がしてならない。ほんとに映画製作者はCGの使用に関して自重してもらいたいなと思う。

(評価:★3)

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