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[コメント] ファウスト(2011/露)

主人公ファウストの内省や高利貸マウリツィウス・ミューラーとの問答については辟易とする感もあるが、しかし画面はもう全てのカットが刺激的だ。画面上の特質は誰もが見たまま了解できる「歪曲」や「褪色」を上げることができるのだが、
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 それらを含めてあらゆる演出が閉塞感と云うか圧迫感と云うか圧縮感と云うか、とにかく圧力の醸成に収斂している。

 それはロケーションが狭い路地であったり天井の低い部屋であったりといった閉所を中心にしていること。また、特にマルガレーテの家が顕著だが、出てくる度に立地が異なって感じる、つまり映画の舞台が迷路のような空間造型となっていること。そんな中で窃視のモチーフが繰り返し描かれていること。ファウストがマルガレーテを見るという主旋律以外にも、例えばファウストの家の中でも墓地からの帰りの森の中でも常に主人公達以外の人物の視線が描かれている。或いは登場人物どうしがやたらと身体を密着する所作の演出。例を挙げるとファウストの父親が息子の頭の上に顔を載せるという奇異な所作。ファウストとマルガレーテのスリリングな接近。そしてファウストと高利貸マウリツィウスのくんずほぐれつの取っ組み合いの演出!まるでマルクス兄弟の喜劇のようじゃないか!

 全編に亘って喜劇的趣向も満載なのだが(ハンナ・シグラ!)、エンディングでは観客の魂を押し潰して突き放す。本作で最も見る者の身体的興奮を煽るシーンは高利貸が石で押し潰される場面だろう。彼と共に胸の痛みを覚えた者、痛みに共鳴した観客は一人残らず「悪魔」だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)Gala[*] 3819695[*] けにろん[*] セント[*] 煽尼采

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