[コメント] 終の信託(2012/日)
役所広司、大沢たかお、草刈民代は演技賞を取るんだろうと思う。草刈民代の言動には納得性の低い演出が多いが、そんなことは重要じゃない。そう思わせるだけの力のある映画だ。特に検察局の中の造型は冒頭からエンディングまで良い。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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とりわけ取り調べシーンの、照明の変化の演出にはドキドキする。だが一方、中盤までが顕著だが、置きに行くようなカットも目立つ。例えば病院の中庭で二人がプッチーニの曲について会話する、トラック移動のあざいといカット。(だいたい、この選曲もありきたりな感が横溢だし、「恋の歌と思っていたが、とんでもない喜劇」という警句的な扱いも納得性が低い)。あるいは、満州時代の回想シーンが力のない陳腐な造型だったりする。置きに行くような(って野球用語?)という言葉のもっと典型的なのはラストカットの河原の巨木でしょう。
ただ、そんな中で草刈民代の撮り方には唸る部分がありますです(ちょっと恥ずかしいのでこんな言葉遣い)。まずは浅野忠信とのベッドシーンがいいのだが、実は本作で一番感心したのは、草刈が当直室でウィスキーを飲み始めてから苦しみ出す一連のベッドでのカット。こゝは他のメディアでは絶対出来ないような豊かな時間の使い方だし、同時に実に映画的な「女の横臥」のカットになっている。
というように、相変わらず全体的にはムラのある出来だと思うけれど、題材の持つ力だけではない、要所要所で演出の力を発揮する映画です。
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