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[コメント] ラストスタンド(2013/米)

エクスペンダブルズ2』のアーノルド・シュワルツェネッガーに「見下げ果てたよ……。僕は、アンタを、軽蔑するッ!」とほざきあげた舌の根も乾かぬうちに『ラストスタンド』のアーノルド・シュワルツェネッガーに喝采を送れる程度に私は節操も定見も欠いた観客であると今一度ここで宣明しておきたい。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自らの肉体を資本としたアクションスターが年輪を重ねるにあたって、演じる役柄をどのように変容させていくべきか。シュワルツェネッガーがそのロールモデルとしてクリント・イーストウッドを見ていることはほぼ明らかだろう。驚くべきはそれが抽象的な領域に留まっていないところで、とりわけ序盤のダイナーのシーン、カウンターに腰掛けたシュワルツェネッガーが斜め後方の怪しげな二人組を見やる。そこでの身体のひねり、表情の作りがほとんどイーストウッドの完コピになっている。

もちろんそれは些細と云えば些細なことだ。「非-人間らしさ」を武器に出世を果たしてきたシュワルツェネッガーは、(少々乱暴な分類になるけれども)その非-人間らしさのヴァリエーションでアクションを演じるか、あるいはそれを逆手にとって積極的に滑稽を演じるかの二者択一で作品を重ねてきた。しかし取り立ててファンでもなかった私の目から見て、それらが成功した例は決して多くない。したがって『ラストスタンド』はシュワルツェネッガーが新たに掘り当てた役柄の金脈とでも云えるだろう。現状の身の丈にふさわしく、なおかつイーストウッドを見据えつつ彼をなぞるでもない「人間味があり、親しみやすく、頼れる、絶対的な、チームリーダー」というのがそれだ。

全篇が西部劇調に仕立てられたのはシュワルツェネッガーというよりもキム・ジウンの趣味嗜好だろう。私にしてもこのような既視感は不快ではないが、やはり何らかの独自性は必要である。それを添えるのは演出家とともに主演スターの務めだ。すなわちラスト、銃撃戦でも殴り合いでも得物を振り回すでもなく、プロレス技を駆使した橋上の対決。シュワルツェネッガーの肉体とぎりぎりの現役感が成立させた、おいそれとは再生産できない名シーンだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)jollyjoker ガリガリ博士 セント[*] けにろん[*]

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