[コメント] がんばれ!ベアーズ(1976/米)
芝居の間の取り方/詰め方がすばらしい。ベアーズの全員がウォルター・マッソーの演技に拮抗しえている。この映画はいささかも観客を、「映画」を舐めていない。演出も撮影も編集もド本気だ。才能ではなく、努力が生んだ映画。その制作姿勢は努力(と楽しむこと)について語る作品自身と正確に一致している。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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素敵な細部のアイデアに溢れており、その例を挙げだせばキリがないほどだ。フロントガラスにヒビが入ったままのマッソーの自動車。裸で木に登って下りようとしない黒人アーメッド。チョコレートを包装紙ごと食う太っちょエンゲルバーグ。ゴミ箱に尻から押し込められて身動きできなくなる腕白タナー。
また、カメラが「顔」をよく捉えている。決勝前日のテイタム・オニールとマッソーの泣き顔のカットバック。決勝戦での説教中に自分の誤りに気づくマッソーの表情の変化ぶり。これらに限らず、この映画における「顔」はことごとくよい。
そして、この映画の真の主人公は内気な少年ティミー・ルーパス君だということは是非とも云っておかなくてはならない。オニールより断然かわいらしいと云ってもよい彼がフライを捕る、ただそれだけのことを最大のクライマックスに仕立て上げてしまう慎ましくも不遜な演出。これは決して凄い映画ではない。だが「正しい」映画だ。それはもちろん「才能ではなく、努力が生んだ映画」というのを云い換えたにすぎないものだが。
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