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[コメント] ゴーン・ガール(2014/米)

なんかまだ隠されている事実がありそうな…
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「僕たち夫婦はどうなってしまうんだろうか」などと、永遠に蜘蛛の糸にからめとられた獲物であるようなセリフをいう夫ではあるが、そんな不穏な予兆なんかこのあとすぐにでも吹っ飛びそうだ。

夫のキャラからしてそんな生活は持続させられない。なにしろ妻の過去の恋人にまで会って、彼女がまごうかたなく精神異常なことはよくわかっているのである。殺人容疑の渦中でありながら、女子大生とエッチしちゃうような、あまり物事を難しく考えずにまずは行動するタイプの人だ。妻への憎悪・恐怖はすぐにでも爆発して、妻との決別のための何らかの具体的な行動を起こしそうだ。さらにいえば、生活力がないわけではないし、人並み以上のモラルの持ち主のように見える。したがって恐怖を内包しながら殺人鬼の妻の支配下にあるような生活は速攻で終わりそう。

夫がそんな妻と仮面夫婦を選ぶ理由が、我が子の妊娠のせいのように描かれているが、そこが嘘くさい。もしこの夫が妻との生活を選ぶのなら、それは常識を超えた二人の間柄の強度があるはずで、それは他人には理解できないような理由であるほうが自然に思える。双子の妹が看破しているように、結局は一緒にいたいからそうするんであって、その理由は他人にはまったく理解不能というのが本当のところ、っていうのが正しいと思う。

要するにこの話は、夫婦という他人同士はお互いの何もかも知っているといえるのだろうか?と観客に対し、あなたの愛すべき伴侶(夫婦未満の恋人とかでもいいだろう)の心の闇の存在を気づかせるというテーマありきなのだ。夫が妻のしたことに確信を持てないのだとしたら、ラストの「妻の頭の中をのぞいてみたい、われわれ夫婦というものはお互いの何を知っているのだろう」というモノローグでいいだろう。しかし何もかも知っていてあのモノローグなら、それこそ本当の秘密を隠すための表向きなフェィクのように聞こえてくる。「夫婦こそ最大のミステリアスな関係」という作者の観念的なテーマが、このキャラクター達が演じる実際のドラマの中で上滑りしているのだ。だったら、まだこの2人は、われわれに本当の理由を話していない…そんなことを確信させるような終わり方であったほうが正しいような気がする。

そして何か嵌らないピースが残されていないか、と探したら、それはこの物語で描かれていない、二人の恐ろしい倒錯した性的な結びつきにあるのではないかと思うのだ。江戸川乱歩やエロ小説ならむしろその性的な秘密の扉をあけるための序章でしかないようなところで終わってしまっているようなのがこの作品なのだ。双子の妹との兄弟以上の結びつきも何かどっかでおかしい気がする。近親相姦的な匂いがする。ほんとはこの双子にもアナザーストーリーがあるのではないか?

なんか本編自体がおおがかりなフェィクであって、全然また違った真実の話が隠されているんです…と言われたほうがしっくりするのだ。

(評価:★4)

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