[コメント] この国の空(2015/日)
戦争終期の昭和20年。市井の人たちはどう毎日を生きていたのであろうか。空襲に明け暮れ、街に老人と女しかいなくなっている。子供の声も聞こえない。食料もだんだんと途絶えてくる。そんな時代のある若き女性の胸の内を開けてみれば、、。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まず感じたのが当時の言葉遣いの美しいことだ。みんながこんな上品な言葉を使っていたとは思えないが、それでもある程度の中産クラスはこんなものだったのだろう。現代人の言葉のひどさが津々と伝わってくる。
一人の人間にとって、明日死ぬやも知れぬそんな環境に置かれたら、きれいごとばっかり言っておれないという気持ちは分かる。周りにまったく若い男がいないのである。自然、隣の家の銀行員が中年男だといっても、気持ちはすり寄ってゆく。
不倫だとか、はしたないとか、そんな上っ面のことより、自分は明日にも防空壕で焼け死ぬかもしれないと思うのである。19歳という一番美しい身空の女性が何もないまま人生を終えてしまう。そんなことがあっていいのだろうか、女性は苦しみ、もだえる。そして男を好きになる。
女にとっては戦争とは誰かが起こして自分を苦しめているものだが、でも終戦になると疎開している男の妻と子供が戻ってくる。終戦は女にとっては喜ばしいものではない。むしろ女にとってはまた新しい戦争となり果てる存在である。
本当の市井の人たちの思いを生裸に描いた作品である。恐ろしいほどの迫力である。人間はいつの時代でも考えていることは変わらないのだ。
反戦映画とも言えるが、むしろ生身の人間の真実の姿を綴ったリアルな人生の姿がそこにあります。力作です。
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