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[コメント] 海よりもまだ深く(2016/日)

家族の崩壊、そしてreborn(再生、復活)の物語は昔からあったが、最近とみに多くないか。それは昔より皆が未来に希望が持てないからだろうか。それはともかく、
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作も、家族が崩壊した後の物語だ。そして、元妻と息子と老母と団地の一室で台風の為、夜を明かすことになる。

と来れば、この一夜で家族がrebornする出来事が起きるぞと期待したが、それは無く、通常で考えられること、普通によくある事以外は何も起きなかった。

この楽しみな(?)夜に行きつく迄に、本作は家族の会話を我々のナマの日常の会話で綴って来ている。この‘あるある感’溢れる会話、リアルな会話はその夜も続く。

その中に、タイトル「海よりも・・・」に関係する会話シーンがある。歌謡曲「♪〜海よりもまだ深く〜♪」(別れの予感:テレサ・テン、詞:荒木とよひさ) がバックに流れ、

老母「あたしはー、海よりも深く人を好きになったことなんて、この歳になるまで無いけどさー」

主人公「さみしいこと言うなよ」。 「あんた、あるの?」「俺?俺は・・・、まぁそれなりに」「無いわよ、そんな人は。それでも生きてんのよ、毎日楽しく。ううん、無いから生きて行けるのよ」

この言葉を聞いた時、ふっと肩の力が抜けた感じがした。そんなにいつも強く愛を証明しなくてもいいんだって。主人公も同じ気持ちだったに違いない。

また主人公と父親の関係。何となく距離があり、心の通い合いなぞ何もないと思っていた。しかし、近所で父親が彼の書いた本を何冊も配って回っていたと聞く。愛を自分の目の前で示すことはなかったが、父親の本当の気持ちが、少し分かった気がした主人公。

これも同じじゃないか。息子にグローブを買ってやる、何かしてやる、教えてやると強く愛を証明しなくたっていいんだ、と思った主人公。

主人公は、今日からガラッと変わるという事は無いだろうが、やがて自分のやり方、仕方、生き方をもっと力を抜いてやって行けるのではないだろうか。

とすると、本作もやはり、rebornの物語になっていると、後で気付いた。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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