[コメント] クリーピー 偽りの隣人(2016/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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アメリカのカルト教会で本作と似たような、被害者がいつでも逃げられたのに加害者に粛々と従い続けた事件があった(名称は失念したが、心理学方面で有名なはず)。事実は小説より奇なり。人間は何をするか判らないという不確かさ。そういったものが目指された作品なのだろう。
そういう意味で唯一巧くいっているのが「娘」の藤野涼子と思う。警察に駆け込むぐらいの知性はありそうなのにそうせず、母親を粛々と処理する造形には謎がある。これは多分、前史をはしょって中途から半円形に描かれるからだろう。薬物も使っていないみたいだし。
その他はレベル以下。香川照之との出会いから細々描かれる竹内結子の造形の無理矢理感が酷い。竹内で面白いのは隣家にスープを残り物だと公言して届ける非常識さで、拘束されるに親和性のあるキャラだと匂わされるが、それ以上の突っ込みに欠け、あげくに薬物のせいにされる。これでは簡単に過ぎる。上手くいっていない西島秀俊との夫婦仲(子供がいない)再興の展開に終盤持っていかれるのも強引かつ安直。
香川照之はもう、謎がなさ過ぎる。世間一般に云う「アブナイ人」の類型がなぞられるばかりで何の驚きもなく、話が進むにつれて何だ当たり前だねとなってしまう。これでは「精神異常者」に近寄らないでおきましょうというご近所の風評レベルであり、実に保守的な空気が漂う。こういう世間の常識をひっくり返すのが映画というものだと思っている私など、余りのホンネ主義に世の中かわったとの感慨を抱かざるを得ない。
西島秀俊の犯罪捜査は趣味だと公言し川口春奈に掴みかかる殆ど「異常」な造形は何だったのかも判らず仕舞い。マニアックに照明いろいろいじっているが、話が退屈だとこういうのも小賢しく見えるばかり。
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