[コメント] シン・ゴジラ(2016/日)
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もちろん悪役は顔の見えぬアメリカな訳だが、幾ら何でも一方的だろう。アメリカ上陸の確率17%とか云っていたが、それだけで東京に核をぶち込む訳がない。本邦の集合的無意識に寄り添えばこれくらいいいかナ、という巧みな匙加減が感じられるばかり。
一方、政府には甘すぎる。当然3・11の隠喩なのだろうが、いかにも生温い。ときどき申し訳程度に「想定外だ」と呟かれるぐらい。あのときのエリート・パニックの酷さは作者には皮肉るに値しないのだろうかと不思議だ。
何やらプランのカウントダウンに入る辺りからは、もうその成功に向けて気持ちよく終わらせましょうという総意の下に俳優が動いているのを眺めるだけになり実に退屈。これで日本再生とか力んでいる訳だが、あの変な博士の資料がアメリカに渡っていたらもっと円満に解決しただろうという点をスルーするので説得力がない。作戦自体も、ゴジラのビルなぎ倒す火炎放射がなぜゴジラ周辺のビルだけ破壊しないのか理解できないし、そもそもゴジラがなぜ移動しないのかも判らない。何なのだろう。
会議室で進行する作劇は大戦ものの系譜に属するだろう。庶民もマスコミもほとんど出てこないパニック映画とは特異であり、好意的に見れば意欲的な切り口だろうが成果が上がったようには見えない。避難所の体育館で避難者が愉し気に振る舞うショットなど挟むものだから、ホンマかいなと突っ込みたくなる。これで3.11について何か語ったつもりなら安易に過ぎる。原発事故は想定されるものであり、ゴジラ来襲の危機管理とは何も関係がない。科学者の活躍物語もまた、3.11の経験から眉に唾してしまうのであった。本作、面白いのは中盤とエンドタイトル、伊福部の音楽が鳴り響く瞬間だけだった。
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