映画について、あの演出がこうなら良かったとかキャスティングが誰某なら良かった、などと言うのは監督の主体性を蔑にした禁忌と個人的にはしているのだけど、しかし、やはり、あの棄教「転んだ」後のロドリゴとキチジローの後日談はかなり蛇足的で映画の熱量も落ちてしまったと感じる

だが言い換えれば「転ぶ」までこの映画は異質な緊張感に支配されていて、自分の知る限りのスコ爺さまとはまた違う一面を見たようだった

冒頭の地獄に始まり草むらと霧（チョイ東南アジア入ったか）、泥濘の道、そして島と波の描写、我々日本人にすら異質に感じられながら、どこかシーンとして心地のよさも漂う風景描写が大きく役割を果たしたように感じる（それに、そうかBGMなしのスコセッシなのか）

原作未読なため何処までがスコ爺の演出なのか判断できないが、棄教し「転んだ」瞬間神父を本当にコケさせるというベタというかもはやギャグには「ワォ！スコ爺マジかよ！ジジイになるってすんばらしいな！」と出色した映画的場面として記憶した

だから、しつこくも禁忌としてだが「転んだ」ところで物語の幕が閉じていたならば、スコセッシ諸作のなかでも「怪作」として記憶に留まったかもしれないし、多くの人はあのシーンまでは（しんどい話ではあるが）非常に興味深く面白く鑑賞したのではないだろうか？（それに劇中、話が空転してるような所は微塵も感じられず常に力強かった）

（あくまで原作に忠実ということらしいですが）最後に爺さまの与太話がオマケでついただけで、そこはスコ爺と俺たちの長い付き合いとして許容すべきとしたいし、まだまだ若造には思いの及ばない爺さまの達観が存在するのかもしれない…（しかし三時間弱、俺も膀胱が限界だったぞ！）