[コメント] たかが世界の終わり(2016/カナダ=仏)
わずかな変化も見逃すまいと、表情に近接したショットを畳み掛け、緊張が沸点に達する寸前に、突如、堰を切ったように吹き出す歌曲が、軽快なのに息苦しくも哀切で、交わらぬ者たちに代わって感情を吐き出しながら、動かぬ物語を「終わり」に向けて動かしていく。
会話劇なのに実に動的でスピディーなのだ。主人公ルイ(ギャスパー・ウリエル)の寡黙が、家族の無意識を支配する。セクシャリティーへの不寛容や、成功者への羨望や嫉妬といった負の感情が、制御しきれず無意識のうちに溢れ出す。あるいは、愛情や庇護といった正の感情が、紙一重の危うさで憐みや同情の沈黙へと変わる。そんな「認め合うことの困難」さが有無を言わさず描かれる。
圧倒的な演出力で容赦なく絶望へと連れ込まれる、何とも不愉快で気の重くなる映画だ。若干27歳で、こんな「受け入れられない悲しみ」の話ばかり、しかも、嫌になるほど鬱陶しい完成度で撮ってしまうグザヴィエ・ドランは、一生、こんな不快な映画を創り続けるのでしょか。
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