[コメント] 散歩する侵略者(2017/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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舞台演劇の映画化だそうだが、演劇のおいしいところが映画では欠点になるという見本のような作品になってしまったように思う。
好きな題材だし、いいところもいっぱいある映画なのに、そこがたまらなく残念だ。
例えば、恒松祐里のアクション。舞台だと、急にあんな綺麗な殺陣をされたらおおーっとどよめいて受けると思うんだよね。でも映画だと、なんで女子高生がMMAの動きをマスターしてるのか不信感につながってしまう。JKファイターだったというならその描写が必要だし、宇宙人が乗っ取ったら格闘センスが増すのだったら他の二人も闘わないと不自然だ。
例えば、長谷川博己が最後に地球の人類を売った動機。舞台だと行動をそのままに受け入れられても、映画だとつじつま合わせが必要だ。地球人に対しての恨みが醸成された描写もないし、なんか唐突なんだよね。
それに、奪われたら奪われたきりになる概念と、奪われてもじわじわと染み出してきて復活する概念を分けてもよかったと思う。愛なんて、最後ほんのほんのほんのわずかだけ長澤まさみから染み出してきてもよかったんじゃない? この映画には哲学的な考察が決定的に不足している。そこが残念だ。
まあ、映画ならではのいいところもたくさんある。
例えば、長澤まさみが松田龍平の髪の毛をグチャグチャにするシーンは感動的だが、舞台では映えないと思う。
松田龍平の演技は、映画で活きる感じにしていると思うし。美術や衣装やロケ地もよかったと思う。でもキョンキョン登場は余計だったような。存在感が出すぎてバランス悪い。高杉真宙 と光石研の演技は、舞台でも映画でもOKな感じで、それって俳優の主張だったのかな。
あとひとつ。冒頭の血まみれ殺戮シーンは、立花あきら(演:恒松祐里)が車内で三つ編みをほどくシーンに回想で入れた方がよかった。淡々と始まった方が、おかしみも怖さも出たと思うんだけどな。 シナリオでは、宇宙人が加瀬真治(演:松田龍平)と融合していい感じになったけど、本作は舞台演劇が映画を侵略してとっちらかった映画になっちゃった。真ちゃんみたいに異質なものがうまく融合してくれたらよかったのに。
蛇足。長澤まさみは決して演技は下手ではないと思います。むしろ上手い。舞台『クレージーハニー』(本谷有希子原作)を観ての感想です。下手に見えるならそれは演出の責任ではないかと思うのです。
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