[コメント] 北陸代理戦争(1976/日)
現実の抗争と映画とは大分話の筋が違うんですが、映画内における川田昇(松方弘樹)こと川内弘と、金井八郎(千葉真一)こと菅谷政雄(「ボンノ」と呼ばれ、『神戸国際ギャング』の主人公高倉健のモデルとなった人物)の反目は公開当時もガンガンに続いており、結果映画公開から2ヶ月後、映画内で川田が襲われた喫茶店「ハワイ」において、川内弘は射殺されてしまったんだそうです。脚本の高田宏治は後に「映画も一つの引き金になったように思う」と語ったということで、まぁゴタゴタはリアルであればあるほど面白いんですけど、いくらなんでも近づきすぎだろうと。
そもそもこの映画、菅原文太主演で『仁義なき戦い』シリーズの新作として撮られる予定だったんです。それが様々な理由で文太が出演できなくなり、松方弘樹に白羽の矢が立ったらしい。しかも予告を観ると伊吹五郎の役を渡瀬恒彦が演じており、何だか始めからいろいろドタバタあったんだろうなぁと、ついこちらも想像を逞しくしてしまいます。
正直この脚本で深作欣二なんだから、そりゃ文太主演で観たかった気はします。西村晃の役も金子信雄にやらせてね。ただその場合、主人公はかなり陰鬱に激しく計算高い人物に仕上がったと予想されるわけで、そう考えると松方弘樹っていうのも正解だったんではないかと思うのです。
この川田の魅力って、「無茶苦茶ながら一貫性がある」ってことだと思うんですよね。常に「盃より己」というスタンスが変わらないんです。とにかく「福井が欲しい」「利権を取り返したい」という一心で、周りの全てを敵に回して戦っていく。それが「計算高さ」ではなく「愚直な激しさ」に見える松方弘樹というキャスティングは、少なくとも僕にとっては感情移入しやすい気持ちいい主人公でした。
まぁキャスティングのことをいうなら、また千葉真一が「戦争大好きヤクザ」を演じていたことの方が奥が深いような気がしますが。
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