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[コメント] ノクターナル・アニマルズ(2016/米)

不幸感溢れるエイミー・アダムスや少し弱々しいジェイク・ギレンホールの演技も本作の魅力の一つ。本当はもっと強い演技もできるのに。そういう対比がまた良い。
deenity

**ネタバレ注意**
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見た瞬間から強烈なインパクトを残す全裸の肥満女性の挑発的なダンス。興奮はしない。ただ目が離せない気もする。不思議な吸引力のあるシーン。とりあえず後を引くほど印象的な冒頭だったのは言うまでもない。 どうやら芸術の類らしい。よくわからないけど。その芸術家エイミー・アダムス演じるスーザンの元に元夫エドワードから小説が届く。包み紙で指を切る。只事ではない感じを上手く匂わせる。

話は三点の時間軸から構成させる。現在・過去・小説の内容。この小説パートが恐ろしく惹きつけられた。日常的な生活の中で突然悲劇に巻き込まれる主人公たち。突然イカれた連中に捕まって妻と娘を連れ去られ、自分だけは荒野に取り残される。この小説の献辞がスーザンであることからだろうか、スーザンはその小説の主人公たちに自分たちの姿を当てはめていく。考えただけでもゾッとする。そんな出来事だ。

小説内の旦那はその輩に復讐を誓う。弱き男だった彼が強く逞しくなっていく。その変化も見事だが、例えば小説世界の舞台が荒野であるにも関わらず、明らかに現実社会の方が色味のない世界、魅力のない世界に見える、といった対比がこの作品は見事でもある。

エドワードとは別れた。弱いと感じた。小説家の才能なんてないと思った。それでも今読んだ小説には少しずつ強く逞しくなっていく彼の姿が、彼の小説に惹きつけられていく自分が感じられる。小説内での男は妻と娘のための復讐のために生きている。愛を感じたのだ。

しかし、この小説の受け取り方は一様ではない。明らかにこれは愛のこもった小説ではないのだ。 それが明確に示されるシーンがある。スーザンが現実社会で惹きつけられた一枚の作品。「revenge=復讐」とモノクロで描かれた作品。終盤の展開を思うと意外にも早い段階でテーマが仄めかされていたことに驚いた。

構成が見事で印象深いシーンが多い作品であるのは間違いない。好む作品ではないが、ラストの現実の展開辺りの余地・余韻は良かった。

(評価:★3)

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