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[コメント] アド・アストラ(2019/米)

科学的考証も今一つだし、宇宙空間の描き方も悪くもないが目新しさもなく、その上、一体全体なにが言いたいのかよくわからない。SFとしてもドラマとしてもつまらない映画だった。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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近未来の宇宙の描き方は、悪いというほどではないが、最近のSFと比べて目新しさに欠ける。宇宙飛行士の心理検査とかも何をやっているのかよくわからない。

それに月面の無法地帯での謎の集団の武力攻撃とか、動物実験をしていた宇宙船内で猿の化け物(ヒヒか?)に襲われるシーンなどがあったが、ああいうのものが一体必要だったのか?本筋があまりに単調でつまらない物語だから、せめて目先を変えて変化でもつけようと無理くりねじ込んだとしか思えないシーンだった。

話の展開は、はるばる40億キロ以上も彼方の宇宙空間で30年以上、孤独な実験をしていて、カリスマ的なリーダーが強靭に他のメンバーを引っ張ってきたが、地球から離れすぎたためにスタッフが次々と精神的に不安定になり、反乱を起こして半ば狂信的となったリーダーに粛清されていき、最後に残ったスタッフがとんでもない事故を引き起こして地球にも大打撃を与えるような電磁パルスを発生させた、ということでいいのか?

けど普通、それだけ長期にわたって宇宙空間に留まって行う実験ならスタッフの交代くらいはありそうなものだ。ただ40億キロの彼方だから、代わりの人員を行かせることはできても燃料切れか何かで帰ってこれないから、実験参加者は生涯、地球には帰還できない覚悟で出発したってことでいいのか?

物語では最後、ブラッド・ピットは核爆発のエネルギーを利用して帰り着こうとしていたようだから(これだって科学的に見れば相当に怪しい設定だ)、行きっぱなしということなのだろうが、それなら宇宙軍によって正式に選ばれていた3人の乗組員たちは、特攻隊を覚悟していったということなのか?とてもそういう感じはなかったがなあ。

それにラスト、ブラピが地球に帰り着いてかつての妻だか恋人だかと再会しているようなシーンで終わったが、強引に海王星行のロケットに乗り込んで結果的に3人の乗組員を死なせた張本人がすんなり釈放されて自由の身になるとは思えんのだが、その辺もかなりいい加減だ。

そして結局あれか、本作の言いたい事は、わざわざ数十億キロ先の星の彼方まで出かけていってよくわからないものを探索するよりも、人にとって大事なものはもっと身近な地球の上にありますよ、みたいな事なわけだろうか?それが一番、気に入らない。

まあ、観て損したとは言わないが、ちょっと期待していただけにがっかり感が大きい映画だった。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)DSCH[*] Lacan,J いくけん 死ぬまでシネマ[*]

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