[コメント] 青春の殺人者(1976/日)
磔刑。(レビューはラストに言及)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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8ミリを撮った高校生時代、このときから彼は親を憎んでいた。と、同時に親を殺した者ははりつけになると強迫観念を抱いていた。それだけが何をやっても実感のない彼が、唯一心震えることだった。
親を殺しても、好いた女を目の前にしても、何も感情はわかない。女の話はどこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない、聞こえない耳に語りかけても何も返ってこない。
親を殺した者ははりつけになる。あの火の中で彼は自分を柱に結び付けた。繋ぎとめておかないと、するりとすべてがこぼれてしまう。しかし、彼は生き残らされる(「生き残る」ではなく)。
ラストシーン、彼が立ちあがったままトラックの上の部分をつかむ姿は、はりつけにあう姿のようにも見えた。だが、それも「はりつけのようなもの」にすぎないのだろう。はりつけにあうことは許されず、彼が何かを感じることはない。地獄の状況。彼の魂はあてもなく徘徊し続ける運命なのだろう。後の時代の阪本順治の『顔』なども連想させる。(★3.5)
*ふだん、原作はあまり意識しないで作品を観ているが、今回は原作が中上健次だったので観た。その原作、「蛇淫」では、もっと親と子との関係性が強調されている。(音楽は、ゴダイゴよりもここで描かれているダウンタウン・ブギウギ・バンドのほうが良かったのかなと思う。)いずれにせよ、強烈に印象に残る設定。
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