[コメント] エゴイスト(2022/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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やりすぎない表現、その匙加減がうまくて唸る。宮沢氷魚のお母さんのところに遊びに行くときはいかにも“男性らしく”振る舞うように意識している感じがまたうまい。
鈴木亮平が宮沢氷魚に対する愛情表現にお金が絡むし、宮沢氷魚の表情が読めなくて彼の気持ちを信じていいのかずっと疑いながらみちゃってた。住まいひとつとってもあまりに違うし、うまくいくのかなあ、そしてあまりにもお金が絡んでくることが見てて苦しかった。
ただ、宮沢氷魚の実家もドアの外にきれいなお花の鉢を飾ってたり(その後、小道具としてうまく使われてた)、あたたかで豊かな場所として描かれていたのが良かった。
私は結局、宮沢氷魚が亡くなったあとにお母さんの口から語られて初めて宮沢氷魚の気持ちを信じた。それでちょっとほっとした。けど、その後にまさかあんな展開になるとは思ってもなくて、本当にびっくりした。予備知識ゼロでみたので。
お母さんにお金を差し出すあの場面はハラハラしてしまった。いくらお母さんが彼らの気持ちを認めたといっても、言ってみれば対等な立場ではなく見えるお金の介在を明らかにしたわけでしょう。プライドを傷つけられて決別という流れが“普通”なのではないかと思った。
ところがお母さんは受け入れて、鈴木亮平はお家にもきてお母さんとも関係を築く。
鈴木亮平の宮沢氷魚への愛情の行き場がなくて、そして自分は幼い頃にお母さんを亡くしているのとも重なって、残された恋人の母親へ愛情が溢れてしまってる感じ。与えることで愛情を表現したくて自分も救われる人間にしてみれば、自分の愛情(と金銭的援助)を受け入れてくれることイコール安らぎかもしれないし、もしかしたら愛されてると信じられることなのかもしれないと思った。
受け入れる側からみても、与えてくれる相手のことが嫌いだったら受け入れないよね。だから、お母さんは鈴木亮平の愛を受け入れたし、映画のラストではワガママさえ言ってる。ちゃんとお互いに愛を持ってて愛を差し出したことがわかるラストがすっごくよかった
鈴木亮平の仕草や表情はもちろん圧巻なんだけど、宮沢氷魚のちょっと気持ちが読めない感じ、阿川佐和子の演技もよくて、まあとにかく全部が素晴らしかった。
前半のハードなベッドシーンはドキドキしたけど芸術的でもなくリアルに思えるんだけどきれいだった。
あとあれだ、天国を信じないって言ってた鈴木亮平が阿川佐和子のお見舞いにいったときに、鈴木亮平のお母さんがうちの息子(宮沢氷魚)を天国でお世話してくれているわねきっと、って言ったときに、ちょっと間をおいてそうですね、って合わせてくれたのが良かった。
『エゴイスト』を観ながら、人の好意は受けたほうが相手も喜ぶんだよなと改めて思う。好意の質とか程度によるけれど、たとえばそれが欲しいものならば、遠慮するより「ありがとう、うれしい!」と伝えるほうがよほどいい。それを上手にしたい。
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