[コメント] ノック 終末の訪問者(2023/米)
木々の向こうから男が歩いて来る。大男。レナード−デイヴ・バウティスタ。こゝからの2人の会話シーンは、徐々に顔アップの切り返しになる。微妙に画角が異なるショットの繋ぎ。斜め構図のエスカレート。会話から、ウェンのパパは2人いて、エリックとアンドリューという。好きな映画は『魔女の宅急便』。口の上(鼻の下)のキズは唇に問題があったため、というようなことが分かる。そして、気持ち悪い手製の武器を持った3人が現れる。サブリナ、エイドリアン、レドモンド。例えば、乾草用フォークに斧を取り付けたような武器だとか。この導入部はとても怖い。
本作は、最終盤とフラッシュバックを除いて、メインのシーンは、ほゞ全編をこのニュージャージーの森と山小屋を舞台とする映画。序盤から、山小屋のドアと窓が機能する。終盤は、その中でも浴室の窓とドアの活用が素敵だ。あと、演出的な部分で、上でも例にあげた顔アップでの切り返しの多用が、恐るべき緊張感を醸成しているという点と、一方、人を傷つける瞬間は、基本、オフで処理される。画面で見せないという選択が徹底されているのは特記すべきだと考える。なので、残酷な場面は画面化されないのだが、常にオフスクリーンを意識させる画面の提示で緊張は途切れない。
また、レナードら4人は、山小屋に来る少し前まで見ず知らずの人間同士だったのだ。なのに、ヴィジョンを共有している、というのは『未知との遭遇』みたい。しかも、そのヴィジョンとやらが恣意的にしか明確にされない(全貌を系統立ててプレゼンされない)のがもどかしいが、それが作劇的な戦略なのだ。エリックとアンドリューとウェンの3人に選択しろ選択しろと迫っても、選べるはずがないのに、形式的に確認するのも、ヴィジョンとして見えていたのだろうか?ただこれは、彼ら4人+3人の終末ゲームの規則なのだ、という大前提を置いて見ると、画面作りは面白いのだ。それに前作『オールド』と異なり、最後まで全体像の理屈を説明しない、理に落ちないのが私は好きだ。
しかし、本作においてもフラッシュバック過多の構成は宜しくない。赤ちゃんのウェンを引き取る場面ぐらいで、もうこれ以上、フラッシュバックは見たくない、と思った。特に後半になるにつれて、フラッシュバックで、テンションが、ぶつ切りにされる感覚を持つ。
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