[コメント] ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画とはつくづく見てみないとわからないものです。見る直前まで「傑作」と信じて疑わなかったです。
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を見に行ったとき、この映画の予告があり、それがまた切れ味たっぷりだったので、「インディ・ジョーンズに不利に働くなあ」とさえ思いました。
ミッション・インポッシブルシリーズは、我らがブライアン・デ・パルマ監督の第1作もいいですが、直近の2作「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」がとりわけ素晴らしいです。この2作の脚本・監督を担当したのがクリストファー・マックァリーで、この人が脚本を担当した「トップガン マーヴェリック」もすこぶる面白い大傑作だった。映画館で映画を見る楽しさを再認識させてくれた。
傑作を連打してきたクリストファー・マックァリーとトム・クルーズがミッション・インポッシブルの新作でもコンビを組み、しかもPART1とPART2に分かれる超大作になるという。史上最高の製作費をかけ、上映時間は2時間44分。これは「映画館で見なくてはならない映画に違いない」と思った。そう、実際に見るまでは。 (二人が映画の冒頭に出てきて「この映画は大画面で見るべきですよ」と言ったとき、「わかってるよ。だから見に来たんだよ」と呟いたものです)
映画はロシアの潜水艦事故から始まる。「それ」を支配する鍵2本のうち1本を持つイーサン・ハント(トム・クルーズ)はアブダビ空港に行くが、そこでグレースという女性に鍵をスられてしまう。
すいません。もう、ここでかなりアウトです。「それ」を支配できる鍵を簡単にスられるものですか?IMFのプロがですよ。脚本は本当にクリストファー・マックァリーか? で、情報を遮断している僕は、このスリ女性、物語を盛り上げるためだけの登場で、すぐいなくなると思いきや、どんどん物語に入ってくるのです。物語に入ってくるどころか、主要キャストにどんどん成長していきます。まさに、えーーーーーーーー?ですよ。 不可能なミッションをことごとく成し遂げてきたIMFが、一介のスリ女性に振り回されるの?スリ女性の成長物語?
だから、その流れでイーサンとグレースのカー・アクションが始まっても全然盛り上がりません。グレース?お前誰や?って感じで。全然感情移入できません。
そ、それに、肝心の鍵がチャチなんですよ。なんか、夜店のくじのおまけのような鍵で、「それ」を支配できる鍵にしては、なんだかなあー。もう一つ言えば、「それ」って意思を持つAIなんだけど、2本の鍵で支配できるなんて、超アナログです。
極めつけは、みんな、どいつもこいつも、鍵の扱いが雑なんです。すぐズボンのポケットに入れます。全世界を支配できる「鍵」なのにですよ。自転車の鍵みたいに扱うのです。 で、みんな、すぐに盗られる、盗られる。ポケットに無造作に入れては盗られるの繰り返し。あんなに大事な鍵なのにね。見てるこっちは、もう、口アングリですよ。
まだあります。悪役ガブリエル(イーサイ・モラレス)が今ひとつなんですよ。なんか、古谷一行と草野大悟(若い人、知ってるかな)を足して2で割ったような善人顔なんです。その点、直近2作のソロモン・レーン(ショーン・ハリス)は迫力ありましたよ。しゃがれた声で、無表情で、悪役としてよかったですよ。この善人顔ガブリエル、なんと、我らのイルサ(レベッカ・ファーガソン)憧れのイルサを退場させるのです。え?ウソでしょ?一介のスリ女性が残って、プロ中のプロのイルサが退場するの?なにかの冗談ですか?
そして、情報を遮断しても否応なく耳に入ってくるトム・クルーズのダイビングシーンなんですが、てっきり序盤で見せてくれるのかと思いきや、何と、クライマックスまで引っ張るのです。あれだけ宣伝しておいてです。で、しかも、列車に飛び移るためにバイクを走らせて、あの高さまで行ったというのです。「道を間違えた」って!いや、もっと低いところで普通気づくだろ。あの高さまで行かないって。それに、アクション・シーンとしては「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」の冒頭飛行機アクションの方が凄かったですよ。
クライマックスの「カサンドラ・クロス」も。なんだかなあ。イーサン・ハントとグレース、どうせ二人とも助かるんでしょ、ってわかってたから盛り上がらなかったなあ。 で、二人を助けるのが重傷を負った金髪女性。あなた、刺されてなかったけ? で、その直後「グレース、ごめん、ハングライダー一人分しかないよー」って、もう、手から水が漏れる、漏れる。マスク作成機械も突然壊れるしなあ。このシリーズって、こんなにいい加減でしたっけ?
見終わったとき、「これが夢であったら」と思いましたよ。こんな脚本に史上最高の製作費かー。めっちゃ期待して来たのになあ。夢まぼろしであったらなあ、と思いながら映画館を出ました。
いや、ちょっと待てよ。
クリストファー・マックァリーとトム・クルーズのことです。この脚本が「とんでも脚本」であることに気がつかないわけがないです。ひょっとしてですよ、PART2まで見たら、「あーそういうことだったのかー。それでPART1はあーいうふうに描いたのかー。やられたー。見事にやられたー」となってくれないでしょうか。
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