[コメント] あんのこと(2023/日)
厚い唇のあん(河合優実)の口は、いつも半開きにみえる。彼女の存在は始終受け身で河合が意識している“芝居”はこの口元だけのように思えた。何かを訴えようにも言葉が見つからないとか、自分が置かれた境遇に呆然としているとか、そんな意思の表れではなさそうだ。
彼女は、だらしなく状況に流されているだけのバカにみえる。河合のたたずまいは世間的なバカを演じてとてもリアルで、引き算の芝居として素晴らしい。そんな「あん」の無知ゆえの無力を笑ったり責めたりするバカにだけは、私はなるまいと思う。
終盤、映画(物語)の意志(力)が拡散してしまっているように感じたのが残念。
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