[コメント] 侍タイムスリッパー(2024/日)
夜、会津藩の侍2人が、志士を襲う場面だが、説明科白の連発と大仰な劇伴に加えて、さらに良くないのが、夜なのに明る過ぎる照明だ。もっと云えば、光源不明。途中から雨天になる(つまり最初から曇天と思われる)のに、かなり強い光が差している(月明かりという理解はできない)。この先どうなることかと不安になった。
タイムスリップ後は、冒頭ほどの違和感を覚える画面は無く安堵する。しかし画面造型で特筆すべきシーンもほとんど無い(ラストのクライマックスぐらいか)。テレビドラマレベル、みたいな嫌な言葉は使いたくないし(きっちり使ったことになってますね)、事実、どうにか映画クオリティではあると思いましたが(これも、我ながら悪しき偏見、優劣感覚が出た嫌な云い回しだ)、やっぱりこの面白さ、見応えの大部分は、プリプロダクションの設計段階で作り込まれたものだと感じた。
例えば、プロット展開の骨格の部分で、主人公の高坂新左衛門−山口馬木也は、自分がタイムスリッパーだと誰にまで明かす(誰までが知る・気づく)のか。あるいは、最後に彼は幕末の時代に戻るのか、どの時代で生きていくことになるのか、はたまた、死を選ぶのか、といった観客の関心事になる事柄についての構成はとてもいいと思う。
いや、見ている最中、リアルタイムに感じたところだと、例えば、主人公が現代の食べ物に感激する場面が反復されるプロットには私もとても感動した。最初は白米の握り飯、次にイチゴのショートケーキ、最後に浅漬け。特にショートケーキの場面で、泣きながら「日ノ本はよい国になったのですね」と云う演技演出には、私もつられて落涙してしまったのだ。こんな細部においても、私はこの映画を嫌いにはなれない。
そして、勿論、本作のストロングポイントとして一番書くべきは本格的な殺陣シーンだ。また、クライマックスのお膳立てとして、スター俳優−風見恭一郎役−冨家ノリマサの、ちょっと臭いが押し出しの良いカッコ良さが実に貢献しているだろう。クライマックスの殺陣シーン導入部における、『椿三十郎』を想起させるような抜刀までの長い間にもシビれる。あと、助監督役の沙倉ゆうのの清涼効果も特筆したい。彼女にまつわる帰結(劇中で監督昇進するのか、主人公−高坂とは恋愛関係に発展するのか)についても良い塩梅と思う。
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