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[コメント] ジュラシック・パーク(1993/米)

スピルバーグはこれを作る過程で自身の作家的本質は「人間疎外状況下の人間」を描くことにあると気づいたのではないか。ジャンルを問わず、以降の彼はほぼそれしか描かなくなる。同時に、これを機に人物造型力の弱さを積極的に役者の充実でカヴァするようになる。ここでもメインキャストは子役を含め皆よい。
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大きく一点に集約すれば「恐竜に襲われる恐怖」でしかないものを、実にヴァリエーション豊かに見せてくれる。スピルバーグの真骨頂だろう。襲ってくる恐竜の種類(「襲い方」の特性)はもちろんのこと、空間の規模・天候・視界の良不良・移動の方向(水平方向か垂直方向か)等々のファクタを変数的に自在に組み合わせ、恐怖ひいては活劇を組織している。合理的である。クライマックスのティ・レックス登場の仕方が顕著に示しているように、オフ・スクリーンの効用もよく弁えている。また「これは恐竜の出てくる映画なのだから当然だよ!」と云ったかどうかは知らないが、とにかく、人が恐竜に喰い殺されるカットを入れずにおれないスピルバーグの性質は、彼が単なる「道徳的に正しい」活劇作家ではないことを端的に物語っている(たとい「人が恐竜に殺される」ことを物語が必要としていたとしても、演出家はそれを「オフ・スクリーンで処理する」権利も当然持っているのですから。もちろん、これは例であって、「オフ・スクリーンで処理する」ことが直ちに「道徳的に正しい」ことを意味すると云っているのではありません)。

キャストは皆よいと云ったが、少々思うところも述べておく。サム・ニールの「子供嫌い」の程度はもっと病的なものに描いてもよかったのではないか。このニールはせいぜい常識人の範囲内での子供嫌いにすぎず、したがって彼が子供らを守る・子供らと打ち解ける展開の落差がじゅうぶんでない気がする。ジェフ・ゴールドブラムの活躍する場面はせめてもうひとつほしい。ローラ・ダーンは、こんなにキュートな女優だったかしら。

(評価:★4)

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