[コメント] ニュー・シネマ・パラダイス(1988/仏=伊)
やわらかに 映画をつつむモリコーネ シーン目に見ゆ 泣けとごとくに
(短歌でコメントシリーズ・第1回)
決してマイ・ベスト・ワンという訳ではないが、もし将来私が劇場支配人になったら、こけら落としで掛ける映画はこれにする。そして経営不振で閉館せざるを得なくなったとして、やっぱり最後に上映するのはこれ。映画がビデオ(DVD)やシネコンに占領される前に、映画館における最後の授業ならぬ最後の映画として、これほど相応しい映画は他にないだろう。
初めてキス・シーンの公開が許されたとき、興奮してざわめく観客の中で、一人黒い服に身を包んだおばあちゃんが、冒涜を恥じて十字を切るシーンが好きだ(しかしちゃんと観に来ている)。モラルという言葉が、やっていいことと悪いことの基準を意味するのだとすれば、戦後からこっち、モラルの曲線は右肩下がりを続けっぱなしである。それも世の流れとあれば、いいとか悪いとか言って始まる話でもなく、ただノスタルジーをもって描くのに相応しい題材であった、というにすぎないのだろう。
過去を振り返り想い出に浸る映画としてではなく、過去からのメッセージを「素敵な贈り物」として託す構成の秀逸な、光と陰のマジックを観つづけるすべての人に奉げられた名画。
85/100(01/10/14記)
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