[コメント] しとやかな獣(1962/日)
晴海団地を舞台にして、ほゞその一室のみで、登場人物を出入りさせる本作の川島演出は、閉塞空間を扱った彼の演出の中では頂点だろうと思われる。
とにかく、アパート内(踊り場や階段、ベランダの外も含めて)を縦横無尽によく見せる。そして、玄関扉の覗き窓や壁の足元にある小さな開き扉、或いはバスルームといったパーツの使い方も、窃視や盗み聞きといった映画的な不穏さ、いかがわしさの醸成に見事に機能させるのだ。また、度々繰り返される、長い階段のイメージカット、現実の階段を登場人物の感情に合わせて強調・デフォルメした造型が、極めてシュールな異空間の演出を創出していて出色だ。
勿論、若尾文子をはじめとする主要登場人物のキャラクタリゼーションと、卓越した科白の妙に感心することしきりでもあるが、そのあたりは、プリプロダクションにける、新藤兼人の仕事ぶりとの切り分けが判然としない。であれば、夕景の赤い光の中、浜田ゆう子と川畑愛光が狂ったように踊る場面をはじめとして、決めまくった画面と能楽のBGMのミスマッチや、ヘリコプターや救急車のオフの音響効果だとかを含めて、川島雄三と撮影現場のスタフの仕事ぶりを褒めたいと思う。
#備忘で配役等を。
・伊藤雄之助と山岡久乃の夫婦が、片付け物をしている場面からスタート。
・芸能プロの社長・高松英郎が歌手の小沢昭一と経理事務員・若尾を連れてくる。
・伊藤らの息子、川畑愛光が芸能プロの社員。娘、浜田ゆう子は作家・山茶花究の二号。浜田は、脚出しと下着姿で頑張る。
・ミヤコ蝶々は、飲み屋の女将。川畑のツケの取り立てで来る。
・不正が発覚しクビになった税務署の会計士に船越英二。
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