[コメント] タクシードライバー(1976/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
誰でも皆「何者かになりたい」と思っている。毎日日記をつけるように。ふるさとの父母に虚構の手紙を書くように。せわしげに街を横切る独り独りの人間がぼんやりと目に残る。それぞれが「生きている」。ウィザードも言う「みんなお前と同じなんだ」。でも俺は、「みんなと同じ物」になんかなりたいわけじゃない。だって俺は俺だ。人とは違う。じゃあ俺って何だ?・・・・・・・・わからない。
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この映画を観た後、しばらく自分達の間で流行っていたセリフは、「俺に言ってるのか?」ではなく、「やあ!スポーツ!」でした(笑)。スポーツステキ。アイリスを抱きしめながら囁く言葉が、本気なのか、嘘なのか、なんともわからない所がどきどきしました。あれはあれで彼は本気なのではないかな。まあ、だからこそタチも悪いのだろうけどね。
今一番好きなセリフは、「あなたは歩く矛盾ね」です。
ところで実際、自分にとって都会の繁華街は、孤独を感じる場所というよりも、地方に居場所のない人間が、自分の「HOME」と決めた、居心地の良い隠れ家のような温かさがあります。この映画の都会にも、それがちゃんと感じられる。特別誰かがやさしいわけでも、親切にしてくれるわけでもないのに、その温かさが哀しくなる。反対に段々腐ったように荒れてくるトラヴィスの部屋が寒い。
音楽の素晴らしさがあちこちで書かれていて、私も自分にとっての映画音楽の一番と言われたらこれだと思っています。煩いくらいに全面に出ずっぱりもいい。特にラスト、全てが終わって、しみじみとエンディングが流れていたと思わせておいて、もう一度あの狂ったような不吉なフレーズが始まる所。「何も終わっていない。」と感じてどくり、とします。
知ったかぶりのようになりますが、特に他に書かれていなかったので、万一知らない方のために。浮気女房を追ってきたひげのタクシー客を、スコセッシ監督自身が演じてます。
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