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[コメント] 野性の少年(1970/仏)

内容も実話に基づきテーマ性が強い作品だが、トリュフォーアルメンドロスの初タッグ作品ということやJ・P・レオーに捧げられていることを考えると、内容以上にトリュフォー作品の中での重要度が高い。映画を観て、その“重要度”に初めて気づいた。
Keita

 以後名コンビとして美しい映画を連発する監督フランソワ・トリュフォーと撮影ネストール・アルメンドロスだが、このふたりが初めて一緒に仕事をしたのが、この映画。『恋のエチュード』や『アデルの恋の物語』をはじめカラー作品が多いのだが、初コンビでは意外にモノクロ作品。トリュフォーの遺作『日曜日が待ち遠しい!』はこのコンビにとって2本目のモノクロ作品であり、モノクロに始まりモノクロに終わったトリュフォー&アルメンドロス。そのモノクロがこの映画で特に素晴らしい。

 時に牧歌的な雰囲気を醸し出す自然の中ではしゃぐヴィクトールの姿、のちの“ロウソク三部作”にもつながるロウソクの光のみでの撮影の雰囲気。実はボクはこの映画はトリュフォーの中では駄作に位置するのではと思い込んでいたのだが、とんでもない!

 題材も非常に興味深く、すごく真面目に撮影された映画である。冒頭に「ジャン・ピエール・レオーに捧ぐ」という表記があるように、トリュフォー自身、この映画をデビュー作『大人は判ってくれない』と比較した形で語っていたが、トリュフォー本人は博士役を演じながら、自分が子供たちに教育する年齢まで来ていることに気づいたと言う。そういう意味で第二の処女作とも、転機になる作品とも考えられ、大きな意味を持った作品であるわけです。

 子供たちに教育する年齢になったトリュフォーがヴィクトールを見る視線もどこか優しく感じられる。映画の中で教育するトリュフォー同様、ジャン・ピエール・カルゴルを野生児として見事な演技が出来るよう指導したことが想像できる。そして、同じようにレオーも指導してきたことも想像できる。このように考えたあとに『アメリカの夜』のトリュフォーとレオーの関係を見たら、余計感慨深く思えるだろうなぁ・・・。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ナム太郎[*] 3819695[*] ゑぎ[*]

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