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[コメント] 影の車(1970/日)

僕が生まれる少し前の映画なのですが、町並みやバスや団地など、なんだかとても懐かしいような気がしました。観る人(30歳前後の人かな)の潜在光景のようなものを呼び起こしてくれるかもしれません。
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







岩下志麻の演じる保険の外交員について調べたら次のようなことがわかった。

保険の外交員はそもそも海外だと男性がするのが普通だが、日本だけ違うのはなぜかというと、戦争が終わったときにたくさんいた戦争未亡人の為に、政府が生保の外交をすればいくらか補助を出すという形で奨励したのが始まりらしい。従って、同じ金融でも損保や銀行はそういうシステムがなかったから今でも男の人が多いが、生保業界は女性がやる風習が残っているらしい。

というわけで、当時(今もそうだろうか)働き甲斐のある仕事である様子がこの映画を見ているとよくわかる。岩下志麻のクールな佇まいは、いかにも生保レディーに相応しく、彼女が生命保険に関する話をすると何やら胸騒ぎがするのは僕だけだろうか。 彼女の出演作品はまだ20本ぐらいしか見てないが、この作品における岩下の美しさは別格だと思う。司葉子の絶頂期の作品が「乱れ雲」だとすれば岩下志麻のそれはこの作品だと断言したい。

他に作品中に出てきた用語についてだが、シャロン・テート事件は『ローズマリーの赤ちゃん』を監督したロマン・ポランスキーの嫁さんが、チャールズ・マンソンの信奉者によって1969年8月9日に殺害された事件のことで、殺害当時のシャロンが妊娠8ヶ月であったことが子供を欲しがる啓子が話すことによって単なる時事ネタに留まらない不気味さを感じた。

また、SSTはイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機 (SST: supersonic transport)コンコルド (Concorde)のことで、この映画が公開される直前、1969年3月2日に初飛行に成功したばかり。旅行代理店に勤める浜島が得意先から手に入れたのであろうか。たとえ敵意を抱いていたとしても、いかにも健一が喜びそうなプラモデルである。

作品としては、健一に殺意があったかどうか最後まで明かしていないような明かしているような演出が絶妙だと思った。芥川也寸志の甘い音楽も素晴らしい。この前再見した時に感心したのだが、岩下と加藤のラブシーンから健一の寝顔に移った時に流れる不協和音が何の違和感もなく岩下が働く次のシーンに繋がれるのが非常にうまいと思った。

(評価:★5)

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