[コメント] グラン・ブルー(1988/仏)
海の「青さ」の更なる深みにある漆黒の「闇」は、『2001年宇宙の旅』の宇宙の闇にも匹敵する別空間を現出する。主人公ジャックと恋人の関係は『アルタード・ステーツ』のそれにも相通じる。ただ、異界の住民たるイルカが、あまりに人間に飼い馴らされている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ショーに出演しているイルカに元気を取り戻させるために、夜にこっそりと、如雨露で水をかけてやりながら町中を連れ出すシーンや、プールの底でジャックとエンゾがシャンパンを開けるシーン、ジャックでベッドに横になっていると、天井が波打つ水面と化す幻想的なシーン、ウルトラマンのような潜水服のデザイン等々、シーン作りの巧みさ、視覚的な魅力、共に優れていて長丁場を飽きさせない。
だが、潜水シーンはもっと時間をとってほしかったくらいだ。水が「青さ」から徐々に「闇」へと向かっていく過程を描くことで、その深さや、潜水していくに従って孤独と純粋性を深めていくジャックの精神状態も見えたはずなのだが、実際にはかなり簡略化された表現になってしまっている。結果、海の深みの静けさと闇に身を沈めていることと、地上での生活との対照性が際立たない。
台詞の遣り取りもなく、ただ海中に沈んでいくだけのシーンを長くとることがなかったこの映画は、ジャックの希求心とは逆に、地上の人間的な世界に寄りかかりすぎだと言うしかない。そのせいで、海という異界の住民であるはずのイルカもあまりにフレンドリーすぎる。ジャックが大会での潜水に成功するシーンで、イルカが海上から跳びあがったり跳び込んだりするカットが、ジャックのアクションと連動する形で挿まれているところなど、イルカ自身の喜びの表現というより、人間のために曲芸を行なっている感がある。
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