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[コメント] 疑惑(1982/日)

日本映画で役者の演技だけでラストまで魅せる映画というのは凄い!。桃井の圧倒的な存在感は必見の価値がある。これを観てしまうと球磨子役に他のキャスティングなんて考えられない!。監督の演出を遥かに超えてしまったであろう桃井の女優の輝き。観ていて嬉しくなってしまう程に彼女の才を堪能出来る。
TOBBY

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冒頭のふんぞり帰った桃井の顔から幕を開けるのが象徴的。前述したように脂の乗った桃井の独壇場ではあるのだが、全体のテンポも軽快で(幾ら才能ある役者を得ても脚本や演出の内容やリズム感が悪けりゃ無意味)、その辺に野村監督のセンスと貫禄を感じる。桃井演じるヒロインのオーバーワークぎりぎりの独特な個性的な仕草やキャラクター造型ばかりに目が行きがちであるが、彼女が法廷で押さえられずに下品な振る舞いをしたりしても、根底にあるヒロインの素直さと人の良さをきっちり裏に滲ませる演技に感嘆。メリル・ストリープとかグレン・クロースあたりと肩を並べてると言っても過言では無いと思う。当然、周囲の役者陣はサポーティングに回っている。ヒロインの男友達の鹿賀はいい加減さは上手だが、人の良さも出てしまい、もっと感じの悪い像に演じるべきだった。検察側の弁護士小林は存在感も薄いし、つまんない演技をしていて、せっかく桃井岩下と対峙する役柄なのにミスキャスト。もっと存在感と正義感の漂う役者にすべきだった。桃井を弁護する岩下は完璧に浮いている。抑揚の無い平板な年齢以上に老けている声自体に問題があるが、表情も不必要に厳しく、いかつい。証人や自分の家族に接する態度も冷酷で恐ろしい(証人の少年を張り上げた声で威圧し尋問していて、あり得ない!)。仕事に従事する女の寂しさや家族との孤立を履き違えて演じているのが歴然。この人、不器用な女優なんだなぁというのが目立つだけ。不愉快で嫌な女という印象は観客に芽生えるが、監督の意図はそこには無いはずだし…美人だけど大根?。もっと口調は穏やかでも颯爽と知性で相手側の証人や弁護をけむに巻き、桃井の窮地を救ってやるような飾らない人物像が好ましかった(竹下景子とか香川京子とか)。岩下の取り澄ましてお高くとまってる感じが作品のバランスを崩していて非常に惜しい。

(評価:★5)

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