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[コメント] パリ、テキサス(1984/独=仏)

「俺がもし君と一緒になったら、君を外に出したくないし、俺も外に出れなくなる。不安になるから」そう遠くない過去にそんな言葉を吐いた。
ごう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本気でそう思ってたし、今でも思っている。相手は笑ってたけどね。

10年振り?位に彼女とは再会していろんな話をした。お互いにいろんなことがあって、お互いいろんなものを背負ったり捨てたりしてきて。その日たくさん話はしたけど結局彼女の顔は最後まではっきり見れなくて。だから最後のシーンでトラヴィスが後ろを向く気持ちも良くわかります。あれは愛情が今でも残っている証であると同時に、自分が傷つきたくないことをすごく良く表していると思いました。もし彼女が何の反応も示さなかったら?もし完全に自分が「思い出」になっていることを彼女の表情に見てしまったら?

「大きな声で 声をからして 愛されたいと歌っているんだよ 「ガキじゃあるまいし」自分に言い聞かすけど また答を探してしまう」 とはMr.Childrenの歌詞だけど、結局そういうことなんだと思う。トラヴィスも俺も図体がでかいだけの子供。中盤、車道を挟んで歩くシーンの最後、トラヴィスの方がハンターに近寄っていく。交差点にしたってそう。明らかに逃げ腰満点のトラヴィスに、ハンターが「左だよ」。普通は逆。子供が親に近寄ってくる筈なのに。親が子供に道を示してやるものなのに。

ラスト、トラヴィスは一人旅立ちます。それは自分勝手に見えるし、事実そうなのかもしれません。でも彼は一つ成長してる。「このまま彼女と昔のように暮らし始めても、またきっと同じ事の繰り返しになる。だから自分は一緒にはいられない」彼はそのことに気付いたんではないでしょうか。ハンターと言う自分の子供を置いていく行為については俺自身独身なのではっきりとわかりかねることもありますが、前段の例を見ても、きっとトラヴィスにとってハンターは「子供」というより自分の存在を確認させてもらう「親」のような存在だったのでしょう。だからハンターと離れることについても彼にとっては親離れに近い感じがあったのではないかと思います。

この映画、まるで自分を見ているようで切なかったり悲しかったり。いいタイミングで観たなと思います。願わくばトラヴィスの未来が前に進んでいきますように。え?俺のほうはその彼女とどうなったかって?

会わないですよ。決して忘れることはないけど。

(評価:★5)

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