[コメント] ハイ・シェラ(1941/米)
そしてアイダ・ルピノの泪だけが残った。しみじみ秀作。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ギャング映画後期にしてやたらとジャンル横断的で、剽軽な黒人青年とか子犬使いとかハンフリー・ボガートのあしなが小父さんとか、健康的なハリウッド映画の湿度がテンコ盛り。詰め込み過ぎな気もするが、ノアール感の薄さに面白味があり、これらが終盤の転落に向けて落差を構成している。
『街の灯』を反転させてアイロニックなジョーン・レスリーとの件に求心力(遠心力というべきか)があり、「品のいい」彼女との対照で、アイダ・ルピノのアバズレ感が哀れさを際立たせている。ふたりとも別に愛してもいないけど、ボギーはルピノを捨てられないし、ルピノはボギーについて行くしかない。一緒に逃げるしか選択肢のない道行き。テンコ盛りだったあれこれは山脈の岩場に至って全て失われてしまう。ルピノのラストショットの泪にグッときた。
車使いの上手さが印象的。終盤の山道におけるカーチェイスばかりでなく、序盤の犬が飛び出して危うく接触事故の件や(ここですでに犬は不吉と示されている)、ボギーが小間物店襲ったあと車で樹木に頭から突っ込むショットもいい。ウェルメードさが全然なく即物的だ。
私的ベストショットはボギーとレスリーが夜空を見上げるショット。見事に一幅の画になっており、しかも指差される星空をキャメラは映さないのだった。ボギーは私がこれまで観たなかでは一番の男前。
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