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[コメント] 憎いあンちくしょう(1962/日)

もし芸能人の女子マネージャーがトラッカーの『憎いあンちくしょう』を追ったら。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







トラックではなくジープだが…それはさておき…本作中の裕次郎にとってのルリ子は、700日以上を共に過ごした最愛の君であると同時に、自らの自由と欲求を制約される「憎いあンちくしょう」でもある。同様に、ルリ子にとっての裕次郎もまた、仕事の上では自らの能力の高さを具現化してくれる商品のようなものであると同時に、自らの女性をも意識させてくれる、愛しすぎてたまらない「憎いあンちくしょう」なのだが、ただジープを運ぶという単純構造の中に互いの感情の交錯を描くというスタイルが、蔵原監督の自由な映像表現によく合って、非常に瑞々しい魅力あふれる一篇となった。

髪をつかまれ足蹴にされても追い続けるルリ子の追撃の執念が、そのまま映画のテンションと成り得ているのがよい。そのテンションがあったからこそ、対比としての芦川小池の静の存在感も増した。特に後半部の彼女の迫力は、裕次郎の倦怠と暴力性をもっても決して敵うものではなく、その意味でこの映画は、日活映画史上に燦然と輝く「浅丘ルリ子の映画」として永く語り継がれていくべき映画だと思う。

ラストの青空のもとでのファースト・キスも鮮烈。傑作。

(評価:★5)

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