[コメント] 四月物語(1998/日)
四月の憂鬱。
日本の四月は、桜の咲く季節と同時に新生活の季節でもある。
何もかもが新しい、それは同時に不安を呼び起こす。明日がどんな日になるか、まったく予想がつかない。とりわけ大学入学時は時間があり余っているだけに、なおさらそんな不安を増幅させる機会が多い。そんなときは、いつも見慣れたテレビであれどこかよそよそしく感じたり、街角で目にするものすべてが何かに包まれたような不思議な感情をおぼえる。そんなとき桜は何かを表象しているのではないかと、ふと思ったりする。
桜が散りきったあと、そんな感情はすっかり忘却され、人は新生活に適応し、いつしかそれが日常へと変わっていく。その変化には案外気づかなかったりする。
そういう意味で移ろいゆく四月は、微細な変化にも敏感な、五感の研ぎ澄まされた季節なのだろう。そんな微妙な季節感と感情を描いた本作はなかなかの佳作である。
とはいえ、「生きていた信長」のテキトーな作りと陳腐なモノローグは、びっくりするほどの減点対象。(★3.5)
*ところで今年は桜の開花がやたら早い。このまま温暖化が進めば、四月の憂鬱と桜の花がリンクするのは昔の話になってしまうのかもしれない。
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