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[コメント] 快楽(1952/仏)

人の情(じょう)と性(さが)という確かに存在するが「無形」の煩悩を、カメラワークと編集テクニックで“有形”のエンターテインメントに仕立て上げる試み。
ぽんしゅう

凄まじい集中力で、止めどない欲望の暴走を流れるような長回しと小気味よいカッティングで一気に見せ切る「第一話」の圧巻の舞踏会シーン。「第二話」では夜にうごめく男たちの欲望の溜まり場と、旅によりその場から身も心も解放される娼婦たち、そして子供の成長を祝すために教会でみせる彼女たちの精錬さが描かれる。それは俗と聖が矛盾なく併存する人の“矛盾”の肯定、すなわち人間の全肯定だ。「第三話」では激情と無力感が触発し合ってカメラが暴走する。その“落下する視点”が我々に突きつけるのは死の瞬間だ。誰もが遭遇する一瞬の恐怖と平等の無常。

まさに映画的快楽に一点収斂する映画的映画。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] KEI[*]

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