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[コメント] M★A★S★H(1970/米)

フィックスでは必ずしもそうではないのだから、映画を見終えた後に画面の「緩さ」の印象ばかりが残っているのは、やはりズーミングの濫用をはじめとして慎みを欠いたカメラワークのためだろう。だが、私にとってそれ以上に不満なのは「驚き」に乏しいこと。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







たとえば、エリオット・グールドロバート・デュヴァルを殴るところとデュヴァルがドナルド・サザーランドに襲い掛かるところという二つの暴力シーン。今から殴るということがもう明らかに分かる。これはまったく私の趣味の問題かもしれないけれど、とりわけこのような映画における暴力は「唐突さ」こそが命だと思う。

また、たとえ意外なことが起こっても、それは「驚き」よりもむしろ「なるほどね」といったどこか理に落ちた納得をもたらす。同性愛に悩む歯科医ジョン・シャックの「自殺」シーンにおける「最後の晩餐」構図や、デュヴァルが拘束され野戦病院を離れるシーンでラジオから「サヨナラ」の歌が流れること。フットボール・シーン以降のサリー・ケラーマンのキャラクタの変容ぶりだけは完全に虚を衝かれたが、そこでのケラーマンの頑張りはとても痛々しい(けれども、おそらくは意図されたものであろうその痛々しさ、私はけっこう好きです)。

一言で云うと、まだまだ理知的な抑制が幅を利かせていて、イメージの暴走や唖然としてしまうような馬鹿馬鹿しさに欠ける。サザーランドらの悪ふざけも含め、すべてが程よい(カメラワークだけは例外。悪い意味で)。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)DSCH[*] ナム太郎[*] ゑぎ[*]

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