[コメント] ブリット(1968/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
その坂だけれども、比較的短い間隔で起伏が連続する坂というのがよい。起伏の頂点を地平線的に利用して画面に横の線を走らせ、そこから車体を「出現」させるという演出が行われている。同じく坂でも下る一方あるいは上る一方の坂ではこうはいかない。また全篇を通じて云うのならば、坂よりもむしろ「ガラス」あるいは「鏡」が画面的な道具立てとしては特権的に扱われている。スティーヴ・マックィーンが病院で待機しているシーンでのガラスの使い方は地味だが印象に残る。
ところで、これはけっこう変な映画だ。ひとつびとつのシーンがやけに長く、語りの経済性という観点から見るととてもいびつな作りになっている。カーチェイスについては「見せ場」なのだから長くても構わないとしても、たとえば警護していた男の手術シーン。手術の成否を宙吊りにして観客の緊張感を持続させるのが演出の目的であれば、手術室の外でじりじりしているマックィーンを写しつづけるほうがセオリーに適っているはずなのだが、ここでは手術の一部始終を長々とカメラが捉えつづける。絞殺された女の遺留品の鞄を検分するシーンもまた仔細に描写して無駄に長い。あるいはマックィーンとビセットのレストラン・シーンもそう。だいたいビセット自体がこの物語にとっては不可欠のキャラクタではない(事件を解決してマックィーンが帰宅するとベッドにはビセットが……。というオチも妙にもやっとしてますよね)。いったいイエーツは何を見せたいのやら分からなくなってくるのだが、私はそれに対してけっこう肯定的というか、こうした描写の比重のおかしさがこの映画の味になっていると思う。
見終えてから思い返すと、オープニング・タイトルバックはまるで別の映画のようなスタイリッシュな手触り。タイトル・デザインはパブロ・フェロ。
(評価:)
投票
| このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。