[コメント] 愛を乞うひと(1998/日)
不幸な時代のなかで語られる母子の凄惨な関係と、幸福な時代のなかで確かな信頼関係で結ばれた母子の旅。両者は父親を介して繋がっているように見えるが、実は母子家庭であること、父親の存在が希薄であることで結びついている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
母に虐待されて育ったヒロインは、やがてひとりの娘の母となり、父の遺骨を探すために台湾に旅立つ。だが、娘にも判っていたことだが、母となったヒロインは父の足跡のことなどどうでもよかったのだ。…そんなことよりも、母親が生きていることを知り、彼女の愛情のこもった言葉を聞きたかったのだ。そして、その願いがもはや叶わぬということも。
この映画はヒロインが母の経営するというさびれた美容院を訪ね、そこでいくらかの言葉を交わし、バスに乗って去ってゆくところで「終わっている」。台湾を再訪し、砂糖黍畑で額に汗し微笑むのは、映画を明るく終わらせるための方便である。その意味では、ヒロイン独りでは暗くなってしまう映画に積極性と明るさを与えていたのは、ひとえに現代っ子である娘の功績だったといえるだろう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。