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[コメント] エクソシスト(1973/米)

ホラー映画の傑作? 「勧善懲悪もの最高傑作」がより適切ではないでしょうか
ExproZombiCreator

私はこの作品、ホラー映画等といった「但し書きの無い」、映画史上に残る傑作だと思っています。

まず脚本家が神学校出であり本物の信仰を持っているのが大きいでしょう。DVDのコメンタリーで「悪の勝利か敗北かの解釈は視聴者にゆだねる」といったコメントがあり勝ち負け二元論であることはオフィシャルの認めるところなので勧善懲悪の物語とも形容出来ますが、真摯な勧善懲悪は陳腐にならないことを今作は証明しています。露骨な勧善懲悪や、辛気臭い心理描写の続く映画は嫌われてしまうものです。その二つを奇跡のバランスで調合したのがこの作品であると思います……主に「動機」の面でその配慮が感じられます。

次に、どの登場人物にも魂を感じる事が出来る人物創りも良い点です。中でもカラス神父は、私自身とはまるで違う人物ですが、これほど感情移入出来た登場人物は少ないです。

それに原作つきの古典映画とは原作未満の出来栄えであることが多いものですが、今作は見方によれば原作以上ともとれる箇所が少なくありません。

話しの流れも素晴らしく、オープニングからして漂っている緊迫感、科学的医療の否定によって滲み出るリアリティ、カラス神父の信仰を取り戻すまでのお膳立ての良さ、悪魔の邪悪さとメリンの威厳、そしてメリンとカラスというそれぞれ似て非なる動機を持った者による悪魔との鬼気迫る最期の対峙。あらゆる物に気が配られており、虚構の世界から全く現実に引き戻されません。

この作品には「見る側のキリスト教の知識」であるとか、「恐怖感」だとか、そのようなものに用は無いとしか言いようがありません。悪魔に苦しめられる少女の姿を見て感じるべきは危機感であり、恐怖感などではありません。ひどくわかりやすく言えば、この作品を『レオン』のような観方をすればどうでしょうか?と言いたいわけです。スタンの奇行が見せ場ではないように……(これは恋愛映画である!と主張したいわけでなく、あくまで比喩であります)。

原作者兼脚本家は観念的な物の伝達が難しいと判断してか、当初原作とは別物のシナリオを書いたようです。そこで骨を折る決意をして書き直しを命じた監督を賞賛したいです。ここまで全編にわたってエネルギーが注がれた作品は珍しいかと思います。

平均点が現状3.4というのは何かのジョークでしょうか。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] ゑぎ ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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