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[コメント] ライフ・イズ・ビューティフル(1997/伊)

人の良いMr.ビーン?
しど

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







評判のヨイ作品ですが、私にはチンプンカンプンでした。 イタリア系ユダヤ人の主人公が織り成す恋愛話が前半で、 戦時中の強制収容所内での生活が後半と、構成が分かれてます。

基本的にイタリア人のユーモア溢れるというかC調ぶりが爆発している、 「日本無責任時代」の植木等みたいな性格の主人公です。 苦しい現実をユーモアで覆い隠してファンタジーに変えていく主人公なんですが、 終始ふざけてる感じが、終始ふざけてて不幸な私には、どうも合わない(笑)。 前半部は、後半部に対する伏線として様々なエピソードが織り込まれてますが、 なんか長いんですね、私としては。 まあ、「泣ける映画」として観た訳で、前半の「笑う映画」としての流れが、 予想外でもあり、いつになったら不幸話になるんだろう、なんて思いながら、 延々と続く与太話を眺めてた訳です。 で、この主人公のユーモアですが、頭が良い、という設定があるからなんでしょうが、 私には単なる嘘付き、いじわるにしか思えないのです。 例えば、最初に「私は王子でこの地方を統治してる」なんてのは まあ、冗談で良いですが、友達の雇い主の帽子が気に入って、 ことあるごとに、「拝借」しちゃったりですね、 ホテルの給仕の仕事をするんですが、客が食べなかった料理を別の客に出したり。 つい、それをやられる側に立ってしまって、「ムチャするなぁ」としか思えない。 前半は、ヒロインとのやりとりがメインなのに、 ハリウッド映画に慣らされたせいか、ヒロインがヒロインに見えない、 妙に老けてるのです。主人公も老けてますけど。 ここらも、何かズレてるんですね、価値観が。

後半は、いよいよ泣けるはずの収容所での話ですが、 要するに、一緒に入れられた子供に対して嘘をつき通して、 そこを収容所と思わせない、ということをずっと続けてるんですね。 その父としての愛情ぶりで、皆さん泣くのかもしれないですが、 結局ね、現実を嘘で覆い隠してるだけで、何かを変えようとか、 そういった根本的な解決のための行動はとらないんです。 与えられた運命に逆らおうとはせずに、 与えられた困難をわずかに向上させるだけなのです。 「シニカル」といえばそうなんでしょうけど、 イタリア人の能天気さ、ともとれてしまう。

もちろん、暗いばっかりの収容所生活も観たくないですし、 そうした新しいとらえかたを多くの人が支持したのかもしれませんが、 妙にドライな描き方が、ウェットな私の資質とは合わない。

ロベルト・ベニーニの自作自演ぶりがチャップリンと比較されてるらしいですが、 チャップリンは自分をカッコ良く見せないもんで、 時代に翻弄される馬鹿ぶりに泣けちゃいますけど、 この主人公、全部わかってる頭の良い設定でこのていたらくですからね、 泣けないですよ。 だって、この主人公はいいけど、周りは迷惑しか被らない。 みんな笑って済ませてますけど、救ったはずの子供にしても、 そもそも、収容所に入らずに済むように奔走するのがホントの愛情だと思いますし。 Mr.ビーンが良い人でしゃべれて頭が良くてユダヤ人で、 不幸な戦争中に生きてたらこうなる?という映画にしか思えないのでした。 イタリアのMr.ビーンとも呼ばれてるらしいですので、その筋が正解かと。

(評価:★2)

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