[コメント] マトリックス(1999/米)
『マトリックス』シリーズといえば、その一作目の斬新な映像やスタイリッシュなキアヌ・リーブス達のアクションが話題になることが多い。しかし、この映画はコンピュータの世界を描いた映画の中で、コンピュータ好きがしらけなかった初めての映画という意味でも価値が高い。
私はコンピュータネットワークの管理を仕事にしているのだが、そのせいか、コンピュータを題材にしたマンガやドラマや映画を見るとどうしてもしらけてしまうことが多い。たとえば「ゴルゴ13」みたいにちゃんとしたシナリオライターが取材に基づいて作ったお話ですら専門用語が出てくると怪しい場面があるし、古くはディズニーの『トロン』なんかでも悪のプログラムの描き方なんか、さすがにそりゃないだろというような表現だった。また、『MI』シリーズに登場するようなパソコンというのもメールソフトがあまりに特注仕様すぎて違和感を感じたりする。
ところが、『マトリックス』シリーズの場合はそういうところが一切なかった。侵入中に登場する黒電話、携帯電話、拳銃、ヘリ、ビル、スプリンクラー、エレベーター、爆弾、ヘソに入れる追跡装置、自白剤、といった要素それぞれがシステム内ではプログラムのどういう働きでこのように見えているのかいちいち想像しながら見るのがものすごく楽しいし、それらが全然矛盾してこないところが面白かった。そして弾をよけるところなんか「これは割り込みレベルを変えてクロックをいじってるんだろうか」とか、「もしかして優先度勝手に変えてる?」とか想像したり、エージェントがイヤホンを外すところは「ポートを閉じたのかな?」なんて想像するわけだ。
コンピュータが好きな人でもしらけないような、こういう細部の設定があるのも楽しいのだが、お話の本質は「預言とその成就」というオーソドックスなところにあって、これがまた良くできてるからこそ細部も生きるのである。
表面的な洗練された映像の魅力だけじゃなく、お話そのものの普遍的なおもしろさや、細部の作りの良さがこの映画の楽しさなのだ。
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