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[コメント] 金融腐蝕列島 呪縛(1999/日)

元同業者から見た面白いと思う点。あ・・・総会屋じゃなくて金融マンとしてね。
ごう

・仲代達也一人を強大なカリスマにしたこと。

現実にはなかなかあーはならない。何故ならあのクラスの企業の本店にはほぼ必ず「派閥」が存在するから。つまりあのような事件が起きても往々にして派閥争いの道具にされて組織の自浄作用を妨げることになるのだが、そこに絶対的な悪を置いたことで派閥と言う存在を消してしまうことに成功している。

・主人公を副部長にしたこと。

これも上と同様なんだが、部長になれば立場的にも年齢的にもリアリズムがなくなってくる。もし部長だとしたら椎名桔平さんのような社員が本店とは言え、MOF担とは言え気安く話しかけられる存在ではない。特に銀行ならそう。だって、次は平取を狙おうかって人だからねぇ。はっきり行ってあれだけ大きな銀行なんてお役所と何ら変わりない。俺が仕事上知っているのは某D●Bだけだけど、あそこなんてモロお役所だったもの。

それにしても劇中の「朝日中央銀行」は統合して出来た銀行という設定だったが、これは別に普通の銀行にしてたほうが良かったのではないだろうか。そうすればもっと仲代達也の存在にリアリティが出ると思う。そうでなければ、例えば同志を集める時などにもっと「旧行意識」を前面に出して話を作ればドラマティックに出来たような気もする。劇中ではそこには一言二言触れられただけだったものね。もっとも、原作がそうなっていたのかもしれないが。

そういう意味では、俺は原作は読んでいないのだが、あの尺なのに広く浅くなっていたような感じがして、「そこをもう少し突っ込んで〜」的な部分が見受けられたのは少し残念。原作からカットできる部分はもっとカットした方がもう少し面白くなったのではないだろうか。それでも近年の日本映画では見応えのある、すなわち劇場で観て損したとは思わなかった作品であることは間違いない。

それにしてもこの映画を金融マンとして観ていた当時には信じられなかったことだが、俺のいた会社も金融自由化の波に飲まれ今年他社と統合して新しい会社になる。うちの会社の社長は相談役になるそうだが、今となっては「次の次の社長は〜」とか言っていたのが笑い話のようですな。統合といっても事実上の吸収合併に近い状態で、扱う商品も主力会社の商品に統一されていくそうなので当然次に待ち構えているのは新組織発足に伴う拠点と人員の削減。俺の同期は「こりゃ出世どころか生き残るのもキツイな」と呟いていました。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] tkcrows[*] ハム[*] ジャイアント白田

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