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[コメント] らせん階段(1946/米)

とてもいいシーンが幾つもある。まずは冒頭の1906年の映画上映会。ドロシー・マクガイアが画面観て半泣きでいるカットが美しいんだ。映画を観ることを全肯定していて嬉しくなる。このスチールほしいなあ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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当時はこのように宿屋の客間で上映されたのだ。劇伴は即興ピアノ、弁士はいない。冒頭のサイレント映画(タイトルはThe Kissとある。海から女が救出されて終わる)、手回し映写機。

マクガイアが徒歩でお屋敷に帰宅する夕暮れ時、嵐にあって鍵を落とし、これを合羽姿の不審者が眺める件もいい。このカット割りが意外なアングル連発で素晴らしい。ここをはじめとして、撮影美術はとても充実している。マクガイアが階段踊り場の鏡の前で忘我に陥るときの、彼女の口の掻き消されたショットも印象に残る。

犯罪に合った障碍者のハンデを描いて本作は『暗くなるまで待って』に先行している。彼女は声が出せないために電話が掛けられない。しかしショックで声を取り戻す。この結末は、いいハッピーエンドではあるが医学的にはホンマかいなと思わせる通俗ではある。後半には結婚式の誓いを声に出して云えず焦る幻覚があるが、やややり過ぎで障碍者に気の毒のように見える。

終盤は犯人が意外過ぎてアレヨアレヨで終わり弱い。ヒーローと目された医師のジョージ・ブレントが終盤まるで活躍しないのも意外。もっとも私はこの美男子が活躍する古のハリウッド定跡が嫌いなので好ましかった。「らせん階段」はタイトルバックの映像が印象的だがその他は大して生かされず。原作はSome Must Watch.

(評価:★4)

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