[コメント] 最後のブルース・リー ドラゴンへの道(1972/香港)
悲劇の幹に喜劇の枝を生やした(制作順で云うところの)前二作『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』からは幹枝が逆転しているが、いずれにせよ抜きん出た身体操作性能の誇示に終始することなく、多くの場面で喜劇的であろうと努め続けてきた志向/嗜好もブルース・リーの映画的偉才に数えられる。
他方で、前二作に比してリアルファイト感が著しく向上しているというのも衆目の一致するところだろう。殊にチャック・ノリス戦において一打・ワンカットごとに打ち身のメイキャップが丹念に加えられていくのには驚愕する。ブルース・リーはダメージ表現においても新しかったと云っていいかもしれないが、どうもこの打撲傷のさまがリアルファイト感の内実に占めるところは決して小さくない。
云うまでもなく、連続する二カットの間に流れる時間は劇中において零秒であっても、撮影現場にあっては原理的にそのようではありえない。カメラや照明の再セッティング、リハーサル、そしてメイキャップなどが加わる場合はなおのことである。その意味でここでの格闘はワンカットで撮られたそれよりも「嘘」の度合いが大きい。しかしそれがために観客はリアルを感じるという。
撮影現場水準のアンリアルは必ずしも画面のアンリアルを意味しない。
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