コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 妖星ゴラス(1962/日)

バカげた話。だけど実はそんな「バカげた課題を真剣にやり遂げる」話ほど、人って感動しちゃうんですよね。だからどうせバカげた課題ならむしろバカげているほどいい。それを心に訴えかける利点としてちゃんと活かしているのが気持ちいいです。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 またそんなバカな計画でのクライマックスへの盛り上げ方が非常に上手い。本来「避ける」っていうのはネガティブで盛り上がりに欠ける解決法だと思うんですけど、そこで荒れ狂う自然や壊滅する都市を見せながらのカウントダウンを見せることで、上手に「息を潜めてやりすごす」ようなジリジリとした緊張感を持たせているんです。これって誰もが思い当たるすごく身近でリアルな緊張感で、例えばいじめっ子から逃げ隠れて、その隠れ場所の前を怒り狂ったいじめっ子が通り過ぎるときの「早く通り過ぎろ、早く通り過ぎろ」っていう気持ちや、授業でわからない問題を出されて、先生が「この問題は誰に答えてもらおうかな・・・」なんて言いながら教室を見回したときの「俺以外で、俺以外で」って感覚にすごく近い。「隕石を爆破する」って解決をポジティブだとするなら、やっぱり僕みたいな小心者はネガティブな解決法の方がより身近で、よりシンクロできたりするってことなんでしょうね。思わぬところでかなりドキドキさせられました。

 とここまで書くとまるで5点映画のようなコメントなんですが、それが3点なのは、まずはやっぱりセイウチ君。いや、巨大セイウチが出ること自体は構いやしないんですけど、それがあまりに本筋とリンクしていない。「計画が遅れた」程度ならセイウチである必要だって本当はないわけで、どうせだったら「巨大セイウチの力を上手く活用して、窮地に陥った計画を立て直す」みたいに、「セイウチを出す必然性」みたいなものを見せて欲しかったです。

 そしてもう一つは、感情移入のできる「個人」がいなかったってこと。これはストーリー上仕方ないと言えば仕方ないことなんだけど、これはあくまでいくつかの「集団(科学者やパイロットなど)」が各々の職務を全うして地球を救う話なので、ヒーローは不在なんですよね。それは物語としては素晴らしい長所なんだけど、一方では集団に感情移入することの難しさも感じたわけなのでした。それでも最後の「地球を戻す」には、さすがにクラクラしたんですけどね。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)水那岐[*] 空イグアナ[*] 荒馬大介[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。