[コメント] 遠い空の向こうに(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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そこはかとなく『スタンド・バイ・ミー』的な、アメリカの田舎の夢見る少年達の姿を思い切りさわやかに描いた、すがすがしい映画だと思います。
どこまでが実話でどこからが創作なのか?とか、炭鉱夫ってそんなに不幸な職業なのか?とか、そんなちっぽけなロケットでほんとに最優秀賞が獲れるのか?といった余計なことは考えず、ただただ「夢を追いかけて実現するって素晴らしい!」という極めてシンプルなメッセージに乗っかれるかどうかで評価は大きく分かれるでしょう。
僕は何も新しく生み出すことのできない文系人間なので、炭鉱で(命懸けで)石炭を掘り出す、ということもすごいことだと思います。つまりこれは、炭鉱→希望のない斜陽産業、ロケット→未知の世界に飛び出す未来の産業、という対比を親子それぞれに代表させているのであって、アメリカの産業の栄枯盛衰を世代に投影して描いている物語でもあるわけです。そういう意味では、どちらの役割も肯定されて然るべきであって、その証に父親たるクリス・クーパーはこれ以上ないくらい厳格な父親としての威厳を保っており、それが故に息子と衝突するわけです。
要するに、父親も息子も共通して頑固な職人気質を持ち合わせているわけですね。その二人が最後には宥和する。現代日本では、そのこと自体が一つの大きな夢の物語でもあると言えるのじゃないでしょうか。
息子は結局NASAの技術者になった訳ですが、宇宙飛行士になるのとは話が違って、ロケット一つ飛ばすのには何百人という人たちが裏方として支えているわけです。これが、父親が炭鉱を支える大勢の人々の一人であったこととクロスオーバーしてくるところが泣かせます。
話がそれますが、先週の「BRUTUS」は月旅行特集でした。折りしも、イギリス人の青年実業家が史上二人目の民間人宇宙旅行者となった時でもありました。いつか自分も、と思う気持ちは(せめて気持ちだけでも)忘れずにいたいです。
(2002.5.6)
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