[コメント] スペーストラベラーズ(2000/日)
実はこの作品、劇場予告編を見て、 「あ、面白そうじゃん」なんて思ってたんだけど、 「踊る大走査線」の監督なのを危惧して、 劇場で見るのをためらってました。 で、やっぱ、その危惧は的中しておりました。
「踊る〜」のツボは、「化学調味料な辛味のワサビ味のカップ麺」だったが、 今回のツボは何かと思うと、「金城武」の違和感に思い当たる。
孤児院育ちの三人が、 夢見るどこかの南国生活の為に銀行強盗を実行し、 篭城中、人質の銀行員・客を仲間に巻き込む。 アニメ「スペーストラベラーズ」のキャラと、 篭城しているメンバーの数・性格が一致したため、 彼等は、強盗団「スペーストラベラーズ」を名乗る。 頼りない犯人三人も、皆の協力を得て、いつしか立派な強盗団に、 って感じのストーリー。
たぶん、元ネタの芝居(ジョビジョバ作)としては、 この「強盗対人質」のやりとりが面白かったんだろうと、 簡単に想像できる。 芝居の限られた空間と人数では、この人間模様に集中する演出で、 どんどん、おかしな方向に向かっていくスペトラメンバー達の様が、 愉快に感じられたのだろう。 「篭城中の銀行」という状況の中で、 様々な思惑が交差しつつ、どんどん、連帯感で一体化していく人物達に、 「お前人質なのに、何、協力してんだよ」 なんて「笑い」とともに、観客も巻き込まれて一体感が生まれたり。
一方で、映画化されたこの作品は、ただ、「拡散」していくだけなのだ。 人気タレント・役者を集めて、それぞれのキャラを生かそうとすることで、 どんどん、話がバラバラになっていく。 必要の無い出演者が多いのだ。 「踊る〜」が「テレビドラマ」だとすると、 これは、「バラエティ番組」の作りだろうか。 作品自体が注意力散漫、落ち着きな無い上、 ただ、注意力を引く為に、ウケねらいの描写が強調される。 だから、映像の記憶は残っても、映画としての印象はほとんど残らない。
映画のメインに置かれている、 「スペーストラベラーズ」という架空のアニメ自体、 映画で強調される程、意味を持っていない。 突然テレビでの露出度が増す新人タレントが、 「君は一体何なの?」という本来の根拠には触れられないまま、 見慣れた頃に「人気沸騰中」とレッテルを貼られるように、 「何となく出ている」変に安っぽいキャラ、なアニメに過ぎないのだ。
で、「ツボ」たる、「金城武」である。 彼は、テレビで見る限り、いつも、どこか浮いている。 この映画でも周りの出演者との間に違和感がある。 でも、香港映画に出ている彼に違和感は感じられない。 その差は、「非日本人」として理解されがちだが、 私は、彼の「映画俳優」としての存在感にあると見る。 いうまでも無いが、80年代以降の日本のテレビは、 「安さ」、良く言えば「ポップ」、 「安易」とも取れる価値基準を持っている。 「安さ」ならば、香港映画の売りもそのはずであるが、 香港映画は「安さ」が「文化」なのである。 「安さ」を前提にした上で「面白味」を追求しているから、 映画として、独特な面白さが生まれる。 一方で日本の「安さ」は、金をかけて「安さ」を演出する、 ある種、遊びとしての「安さ」である。 だから「下位文化」たる「サブカルチャー」として評価される。
金城は、「安さ」が売りの「本流文化」に属す俳優であり、 日本の役者は、(役者本人の意向・実力は関係無く) 「下位文化」に属する「安さを求められた」タレントなのだ。 だから、日本の役者は非常にわかりやすい、ステレオタイプな役を演じる。 金城は、与えられた「本質を持たない役柄」に、 映画俳優として、つい「中身の無い人間像」を当てはめて、 必然的に「浮いてしまう」のではないかと思ったりもするが、 実は、単に演出プランを与えられてなかったりするのかも(笑)。 もっとわかりやすければ、テレビCMに出てくる、 ハリウッド俳優達の「安さ」にも通じる「違和感」である。
安っぽいアニメ「スペトラ」が「サブカル」のパロディだというのが、 わかりすぎるくらいわかるし、 そんなアニメをメインにしている「サブカル」なこの作品だから、 「映画の醍醐味」ではなく「安さを楽しむ」のが正しい見方かもしれない。 でもテレビならそれで良いけど、映画でやられると困る。 無料で見るテレビなら安さを楽しむのも良いが、 お金を出してまで「ヒトがふざけてる様子」を見る気にはならない。
で、結論。 私は、「踊る〜」の結論として、 劇中の「ワサビ味のカップ麺」を持ってきたが、 今回の味わいも、ほとんど変わらない。 ただ、「カップ麺」に添えられた、本格チャーシュー「金城」の違和感だけが印象に残る。
追記。私は、豪華なモノマネ映画よりは、マジメな自主製作映画のが好きらしい。
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