[コメント] 盲獣(1969/日)
触覚のみに悦びを見い出す唯美主義は、所詮視覚芸術としての映画とは相容れない。この時が旬であった緑魔子がラストまで美しかったことは、この作品の「盲目のリアリズム」への明らかな敗北を意味していた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これがハードコアポルノであり、全裸のふたりが飢餓と生傷に虐げられた極限の醜さまで堕ちてしまわぬ限り、これは成功とはなり得ないのだ。
部屋中を覆い尽くす体外器官のオブジェ、そして横たわる巨大なゴム製の女身。たしかに面白いが、結局視覚を持つ者のための愉しみだ。生まれついての盲人のための喜悦は、けして視覚に頼って生きている人間には喜悦の対象とは認められないものに宿るに相違ない。そういう意味でこれは映画としては秀作でも偽りのドラマでしかないし、美しい緑魔子は盲人がそれと感じる美しさを有していたとは思えないのだ。
そんなわけで、これはラジオドラマのように視覚に頼らないメディア向けの唯美譚であったと言えるだろう。
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