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[コメント] 旅芸人の記録(1975/ギリシャ)

アコーディオンの音色。長回し。時代のうねり。曇天の寒々しい空は冬の時代の象徴か。。。。。でも長い
ペペロンチーノ

なにせ長年の課題。あなたにお薦め第1位。10年前に録画したビデオをやっと観る。だって長いんだもん。

口惜しいのは、ギリシアの近代史に関する知識がないこと。ギリシア神話の知識が薄いこと。アガメムノンの娘エレクトラ。たしかにギリシア神話のとおりだ(←今調べた)。

以下、あいかわらずの技術論。

徹底的に完璧な驚異的な長回し。入念なリハーサルと演技指導を必要とする(そしてフィルムを大量に無駄にする)この手法を当局にばれないよう極秘裏に撮影していたというのが不思議でしょうがない。

登場人物が何かに気づくあるいは目をやる(スピルバーグならここでその表情にカメラが寄る)。 普通ならカットを切り返してその視線の先を描写する(カメラと視点が一致する)。これはもうヒッチコックは徹底していて、観客を登場人物と同じ視点に置くことで心理状態を共有させようとしたのだ。 ところがこの映画は違う。カメラがパンする。時には360度回転する。その一方でフレームの外で起きている事を音だけで描写したりもする。

これは奇をてらったテクニックではない。必然なのだ。狂言回しの主人公達の知りうることのみを撮影した「記録」なのだ。誰に感情移入させるでなく、淡々と事実を(時間どおりではないが)並べることで、浮かび上がる事実とその重み。

常々「カットだショットだ!喜八だ崑だ!えーい面倒だ、みんなまとめてかかってこい!」と嵐を呼ぶ男(クレヨンしんちゃんではない)みたいな事を言っている私が長回しを褒めるのは一見妙だが、カットの長さを問題にしているのではない。タルフスキーもそうだが、私は映画のリズムとして確立したショットが好きなのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] Keita[*] Ribot[*] ina

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