[コメント] 江分利満氏の優雅な生活(1963/日)
岡本喜八の中ではイマイチじゃないか。まずは、全編主人公・小林桂樹の独白で進行する構成がうるさい。例えば、終盤の直木賞を取ってからの過去の述懐は、中盤の小説執筆時の描写と重なる部分もあり、屋上屋を重ねる感もある。
また、主人公の父親役で東野英治郎が出て来るが、これが、かなり興味深い半生を送った人物のようなのだが、東野にちゃんと演技をさせない(東野の見せ場を作らない)のでとても勿体ない気がした。東野の妻(小林の母)の英百合子に関してもだ。対して小林の妻・新珠三千代のキャラクター造型はいい。新珠は呑気だ、と云われる場面もあるが、その屈託のなさがいいのだ。例えば、息子が香具師の砂塚秀夫に騙され、万能薬のつもりでニンニクの粉を買ってくるシーンがあるが、こゝも、新珠は一言の小言もなしで、ニコニコしているのだ。
画面はストップモーションやアニメーション、職場シーンで小林だけ動かし、他の社員を静止させるカットだとか、靴と草履を使って特殊効果で「残菊物語」をやったりと、タイヘン凝っているのだが、これもうるさい。飲み屋、酒場を繋げていく場面転換のカッティングは普通に凝っていて良いと思う。
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